前回、嘔吐(おうと)は、医療者としてはお腹以外の病気から原因を考えた方が良い と書きましたが、とは言っても、やはりお腹の病気(消化器疾患)が多いのは事実です。
では、具体的に、どんな病気が多いのでしょうか?
①急性胃腸炎(お腹のかぜ):前回、下痢していないのに安易に診断してはいけない と書きましたがそれでもやはり一番多いです。特に若い人の場合、そして下痢をしていればかなりの確率で胃腸炎です。
嘔吐患者=胃腸炎と言っておけば当たることが多く
なので、医者もついつい「胃腸炎」と言ってしまうところがあるのだろうと思います。(自分は必ず他の病気も念頭に置いて診断はしていますが)
診断するためポイントは
・数回の下痢をしている
・周りに同じような症状の人がいる
点です。2つ揃えばかなり可能性は高くなります。
さらに発熱や腹痛などが見られることも特徴です。(ただし、発熱や腹痛は③で挙げる胆嚢炎などでも起こります)
詳しくはブログNo.16 急性胃腸炎①などを参考にしてください。
②腸閉塞(ちょうへいそく):文字通り腸が詰まってしまう状況です。
お腹の手術をしたことのある人によく見られます。逆にお腹を手術をしたことがない人や若い人にはあまり見られません。
症状としては、便やおならが出なくなり、腹痛と嘔吐を繰り返すのが特徴です。緊急で手術が必要になることもありますので注意が必要です。
③胆嚢炎(たんのうえん)・胆管炎(たんかんえん):
肝臓(上の図でピンクの大きなところ)の下にくっついてる
緑色部分の袋(胆嚢)や緑色部分の通り道(胆管)が炎症を起こした状態です。
原因としては胆石(たんせき)が多いです。
症状としては嘔吐以外に発熱、お腹の痛み(特にみぞおちやみぞおちの右側)が見られます。腸炎がおへその近くが痛くなることが多いので、少し場所が違うことになります。
緊急で手術が必要なこともあるので、注意が必要です。
つまり嘔吐し腹痛を伴う(つまりお腹の病気が疑わしい)患者さんでは、
特にご年配の方では、胃腸炎以外に、腸閉塞や胆嚢炎・胆管炎などの緊急手術が必要になる可能性があるものを考えないといけません
ので受診する方が無難と言えます。