前回胸痛の中で頻度も多く、かつ危ない心筋梗塞について書きました。
今回は心筋梗塞以外で、怖い胸痛についてです。
救急の現場では、4つの致死的胸痛(命に関わる胸痛)として心筋梗塞、大動脈解離、肺塞栓、緊張性気胸(これに加えて特発食道破裂を入れることもあります)が有名です。
中でも心筋梗塞の次に挙げた大動脈解離は、中年以降に発症しやすくかつ突然死の原因にもなる病気で、心筋梗塞の次に多く見られます。
大動脈解離は、文字通り、全身に血を送る大きな血管である大動脈が裂ける病気です。
大動脈は、体のお腹側より背中側に近いところを走行しているため胸痛だけでなく、背中の痛みが出ることが多いです。
大動脈解離も、血管の病気ですから、突然の痛みでしかも裂けるような強烈な痛みのことが多いです。(ただご年配の方は心筋梗塞同様、胸痛や背中の痛みが軽いこともあります)
なりやすい人は心筋梗塞と似ていますが普段から高血圧があり喫煙している方が発症しやすいです。これらのリスクを持つ方が突然の胸痛や背中の痛みで冷や汗も伴う程度であれば大動脈解離を考えないといけません。
次に肺塞栓についてです。肺の大きな血管が血のかたまり(=血栓)で詰まってしまう病気です。
その血のかたまりはどこから来るかというと、足の静脈からです。
なんらかの原因で足の血流がとどこおってしまい、足に血のかたまりを作ってしまいそれが肺の血管に飛んだ結果起こります。
足の血流がとどこおるのは、動いていないことによるもので、ベッド上寝たきりに最近なったとか、手術直後、分娩直後などです。(この他に癌患者さんなど血が固まり易くなる人でも見られます)
飛行機で、ずっと同じ姿勢でいて発症するエコノミークラス症候群がひと昔前に有名になりましたがこれも同じことです。
最近では大震災や水害の後などで車で生活していて動かないためにこの病気が起こることで脚光を浴びました。時々でも動くことと水分を取ることが発症予防に重要です。
肺塞栓は、統計的には65%程度が胸痛で受診しますが、これ以外に呼吸困難、失神、喀血(咳をした時に血が出る)などの症状がありますし胸痛のない場合もあります。