咳(せき)の治療は、簡単ではありません。そしてこれをやれば間違いないという方法もなかなかありません。その理由は
①咳の原因によって治療法が全く異なるから
②咳は体に必要なため(悪いものを体外に出すため)に出ており、咳止めなどで咳を無理に止めることで逆に悪化する場合があるから
です。
唯一どの咳にも共通する治療があるとしたら、
「タバコをやめる」 ということくらいでしょう。タバコは咳が治らない原因になってしまいます。
①②を鑑みると、咳の治療として基本的には「咳止め」に頼らない方が良いです。
前回も述べましたが咳の原因はたくさんあります。
・急性の咳(おおむね1ヶ月以内):原因としては感染症が多い。
例:かぜ、インフルエンザ、気管支炎、肺炎、百日咳、マイコプラズマ、感冒後がいそう(かぜをひいた後咳だけが残る状態)、気管支喘息、心不全、気胸(肺に穴が開いた状態)、気道異物(気管に食べ物が入った状態) など
・慢性の咳(おおむね1ヶ月以降):いろんな原因があり命に関わる病気のこともある。
例:結核、肺がん、気管支喘息、感冒後がいそう、逆流性食道炎、慢性副鼻腔炎による後鼻漏(鼻水がのどに垂れて咳がでる)、咳喘息、アトピーがいそう など
例えば、急性の咳の原因として肺炎であれば抗生剤治療が第一選択になりますし
気管支喘息であれば吸入薬などが第一選択になります。
慢性の咳の原因として、肺がんが原因であれば、肺がんの治療をしないといけませんし
鼻水がのどに垂れて咳が出る後鼻漏であれば、咳ではなく鼻の治療をしないといけません。
ですから咳止めで安易に咳を止めるという考え方はやめたほうが良いです。
もっとも、明らかにかぜ などと原因がわかっており、咳止め以外に対処法がない場合でかつ、咳をしすぎてしんどい、眠れない、肋骨が痛いなどの時には使用することは必要です。
ただ咳止めの中には眠気が来たり、便秘になったりする薬もあるので注意です。
麦門冬湯(ばくもんどうとう)のような漢方薬の方が良い場合もあります。
↑医療者向けに「治療」(南山堂)という雑誌で、
「胸部 X 線で異常がない 2 〜 3 週間続く咳嗽のアプローチ」という執筆をしております。